トラックのクラッチオーバーホール(OH)は、クラッチの滑りや異音、ギアが入りにくいなどの症状が発生した際に行われる作業です。
クラッチは消耗品であり、長期間使用すると摩耗して性能が低下します。
特にトラックは荷物を積むため負荷が大きく、クラッチの摩耗が比較的早い傾向があります。
クラッチオーバーホールとは?
クラッチオーバーホールとは、クラッチの主要部品(クラッチディスク、カバー、レリーズベアリングなど)を新品またはリビルト品に交換し、クラッチシステム全体の動作をリフレッシュする作業のことを指します。
主な目的
- クラッチの滑りを防ぐ
- ギアの入りを改善する
- クラッチ操作をスムーズにする
- トランスミッションへの負担を軽減する
クラッチオーバーホールが必要な症状
クラッチOHが必要かどうかを判断するためのチェックポイントです。
クラッチ滑り
- アクセルを踏んでも加速しない
- エンジン回転数は上がるが速度が上がらない
- 上り坂でパワーが落ちる
クラッチが重い / 引っかかる
- クラッチペダルが異常に重い
- ペダルを踏んでもスムーズに戻らない
- クラッチが完全に切れず、ギアが入りにくい
異音・振動
- クラッチペダルを踏むと「キーキー」「ゴロゴロ」と異音がする
- クラッチを踏んだときに振動を感じる(ジャダー現象)
クラッチオーバーホール作業の手順
トラックのクラッチOHは、トランスミッションを降ろして作業を行います。
以下に一般的な作業手順を説明します。
事前準備
- 作業する場所を確保(リフトまたはジャッキを使用)
- 必要な工具の準備(レンチ、プーラー、クラッチアライメントツールなど)
- クラッチのリビルトキットを用意
必要な交換部品
- クラッチディスク
- クラッチカバー(クラッチカバーアセンブリ)
- レリーズベアリング(スラストベアリング)
- パイロットベアリング(必要に応じて交換)
- クラッチフォーク(摩耗している場合)
ミッションの脱着
バッテリーのマイナス端子を外す
電装系にダメージを与えないように、まずバッテリーのマイナス端子を外します。
プロペラシャフトの取り外し
FR(後輪駆動)のトラックでは、プロペラシャフトがトランスミッションに接続されているため、ボルトを外して取り外します。
トランスミッションオイルの排出
作業中にオイルが漏れないように、トランスミッションのドレンボルトを外してオイルを排出します。
トランスミッションの脱着
- トランスミッションを固定しているボルトを外す
- シフトリンケージやワイヤー類を取り外す
- クラッチレリーズシリンダーを取り外す
- クラッチハウジングを開け、トランスミッションを降ろす(重量があるためジャッキを使用)
クラッチ部品の交換
クラッチディスクの取り外し
クラッチカバーを固定しているボルトを外し、クラッチカバーとディスクを取り外します。
フライホイールの点検
- 摩耗や焼けがないかチェックし、必要ならば研磨または交換
- フライホイールのボルトの緩みをチェック
レリーズベアリング・パイロットベアリングの交換
- ベアリングの摩耗や異音を確認
- 新しいベアリングにグリスを塗布し交換
新しいクラッチセットの取り付け
- クラッチディスクをクラッチアライメントツールを使用してセンター出し
- クラッチカバーを取り付け、ボルトを均等に締め付ける(トルクレンチ使用推奨)
トランスミッションの復元
- 降ろしたトランスミッションを元の位置に戻し、固定ボルトを締め付ける
- プロペラシャフトを取り付け
- クラッチレリーズシリンダーを元に戻す
- トランスミッションオイルを規定量注入
- シフトリンケージ、配線類を元に戻す
最終チェック
- クラッチペダルの遊びや作動確認
- ギアの入りがスムーズか確認
- クラッチの切れ具合や異音がないかテスト
- 試運転をして問題がないかチェック
作業時間と費用
作業時間
トラックのクラッチOHは約4~8時間ほどかかります。
作業難易度は高く、特に大型トラックではトランスミッションが非常に重いため、リフトや専用工具が必要です。
費用
部品代と工賃を含めると、以下のような価格帯になります。
車両タイプ | 部品代 | 工賃 | 合計費用 |
---|---|---|---|
小型トラック | 3~6万円 | 3~6万円 | 6~12万円 |
中型トラック | 5~10万円 | 5~10万円 | 10~20万円 |
大型トラック | 10~20万円 | 10~20万円 | 20~40万円 |
※リビルト品を使用すればコストを抑えられます。
クラッチの寿命を延ばすコツ
クラッチの摩耗を抑えるためには、以下の点に注意しましょう。
- 発進時の半クラッチを最小限に
- 半クラッチを多用すると、ディスクの摩耗が早くなります。
- 不要なクラッチ操作を減らす
- 赤信号などで長時間停車するときは、ニュートラルにしてクラッチを踏み続けない。
- エンジンブレーキを活用
- できるだけエンジンブレーキを使い、クラッチの負担を軽減。
- 定期点検
- クラッチフルード(油圧式クラッチの場合)の交換や調整を行う。
まとめ
トラックのクラッチオーバーホールは、適切なタイミングで行うことで走行性能を維持し、ミッション系のトラブルを防ぐことができます。
作業自体は専門的で手間がかかるため、自分で作業する場合は慎重に行い、工具や設備が整っていない場合はプロに依頼するのが安全です。
以上、トラックのクラッチオーバーホール作業についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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