トラックのマフラー(排気系統)は、エンジンから排出される排気ガスを処理し、騒音を低減し、大気汚染を抑えるための重要な部品です。
乗用車のマフラーと比較して、トラックは排気量が大きく、耐久性や排ガス規制への適応が求められるため、より複雑な構造を持っています。
目次
トラックのマフラーの基本構造
トラックのマフラーは、以下のような部品から構成されています。
エキゾーストマニホールド(排気マニホールド)
- エンジンから排出される高温の排気ガスを一つにまとめ、排気系へ流す役割を持つ。
- 高温・高圧に耐えるため、鋳鉄やステンレスで作られることが多い。
ターボチャージャー(過給機、ターボ付き車両の場合)
- 排気ガスの流れを利用してタービンを回転させ、エンジンに圧縮空気を送り込むことでパワーを向上させる。
- 一部のディーゼルトラックには必須の装備。
フロントパイプ
- エキゾーストマニホールドからの排気ガスを受け取り、後部の排気系へ導く管。
- 一般的にステンレスやスチール製で、熱や振動に強い構造。
触媒コンバーター(触媒装置 / キャタライザー)
- 排気ガスに含まれる有害物質(CO、HC、NOx)を化学反応によって無害化する装置。
- ディーゼルトラックでは、酸化触媒(DOC)や尿素SCR(選択触媒還元装置)が使用される。
DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)
- ディーゼルエンジン特有の煤(PM=粒子状物質)をフィルターで捕集し、排気ガスのクリーン化を行う。
- 一定の煤が溜まると、DPFの再生(燃焼によるクリーニング)が必要。
センターパイプ
- 排気ガスをリアマフラーへ送る管。
- 防振や耐熱対策が施され、トラックの長い車体に対応するため長尺になることが多い。
サイレンサー(マフラー / 消音器)
- 排気ガスの流れを制御し、エンジン音を低減する装置。
- 内部には隔壁や多孔質のパイプが配置され、音の反射や吸収を行う。
テールパイプ(排気口)
- 排気ガスを車外へ排出する部分。
- トラックの場合、側方排気や上方排気(縦マフラー)など、用途に応じた排気形状が選択される。
トラック特有の排気システムの特徴
縦型マフラー(アップマフラー)
- トラックのキャビン横から上方へ排気を放出するタイプ。
- 工事現場や作業現場での塵・埃の巻き上げを防ぐために採用されることが多い。
横出しマフラー
- トラックの車体側面から排気する一般的なタイプ。
- 車両の左右どちらから排気するかは、メーカーや用途によって異なる。
DPF & SCRシステム(ディーゼル車特有の排気処理装置)
- 近年の排ガス規制対応のため、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)やSCR(尿素選択触媒還元装置)を搭載。
- 尿素SCRは、AdBlue(尿素水)を用いてNOxを無害な窒素と水に分解する仕組み。
トラックのマフラーのメンテナンスと注意点
DPFの定期再生
- DPFには定期的な燃焼再生が必要。長距離走行では自然再生するが、短距離走行が多い場合は強制再生が必要になる。
- 再生を怠るとDPFが詰まり、エンジン出力が低下する。
触媒の点検
- 触媒コンバーターやSCR装置は劣化すると排ガス処理能力が低下するため、定期的な点検が必要。
排気漏れのチェック
- 配管の継ぎ目やサイレンサーに穴や亀裂ができると、排気漏れや騒音の原因となる。
- 特に冬場の融雪剤による腐食や、長年の使用による金属疲労に注意。
AdBlueの管理
- SCR装置搭載車は尿素水(AdBlue)が切れるとエンジン出力が制限されるため、定期的な補充が必要。
排ガス規制と最新技術
- Euro 6(ヨーロッパ)やポスト新長期規制(日本)に対応するため、最新のトラックではSCRシステムやEGR(排気再循環装置)とDPFの組み合わせが主流。
- 電動トラックではマフラー自体が不要になるが、ディーゼルトラックは今後も排ガス低減技術の改良が進められる。
まとめ
トラックのマフラーは、エンジンの排気を適切に処理し、騒音低減と排ガス規制への対応を目的とした複雑なシステムです。
特に、DPFやSCRなどの排気処理技術が進化し、環境対策が強化されています。
適切なメンテナンスを行うことで、性能を維持し、トラブルを未然に防ぐことができます。
以上、トラックのマフラーの構造についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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